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ブログ
1.162026
【日本の家電メーカーが衰退した本当の理由を、金型屋が語る】
私は金型製造業に30年携わってきました。
その立場から、日本の製造業がなぜここまで衰退したのか、現場で見てきた「本当の理由」をお話しします。
「金型?製品が届けばどうでもいいよ」
かつて、大手メーカーの購買担当者からよく言われた言葉です。
彼らにとって金型は「製品を作るための道具」でしかありませんでした。品質が同じなら、安い方がいい。納期が同じなら、安い方がいい。
その考え方自体は、経営として間違っていません。
問題は、「金型とは何か」を理解していなかったことです。
金型は「マザーツール」である
金型は英語で「Mother Tool」とも呼ばれます。
文字通り、製品を生み出す「母型」です。
一つの金型から、何万個、何十万個という製品が生まれます。製品の精度、品質、耐久性——すべては金型で決まります。
つまり金型には、その製品を作るための技術とノウハウが、すべて詰まっているのです。
設計思想、加工技術、材料選定、冷却設計、離型性の工夫……。何十年もかけて蓄積してきた日本のものづくりの「知恵」が、金型という形に結晶化されています。
大手メーカーが選んだ道
2000年代、中国の金型メーカーが急速に力をつけてきました。
価格は日本の3分の1、時には5分の1。
大手メーカーは迷わず中国を選びました。「金型?製品が届けばどうでもいい」のですから、当然の判断でした。
最初は簡単な金型から。そのうち複雑な金型も。やがて設計データごと渡すようになり、技術指導まで行うようになりました。
「安く作れるなら、教えてあげればいい」
そう考えたのでしょう。
気づいたときには、すべてが流出していた
その結果、何が起きたか。
技術が全て流出しました。
金型の設計データを渡すということは、製品のすべてを渡すということです。寸法、公差、材料、構造——リバースエンジニアリングするまでもなく、すべてが相手の手に渡りました。
日本のサプライチェーンが崩壊しました。
金型メーカーが仕事を失い、廃業が相次ぎました。金型メーカーを支えていた工具メーカー、材料メーカー、加工機メーカー……。連鎖的に国内の製造基盤が失われていきました。
そして今、国内で金型が作れなくなりつつあります。
技術者が高齢化し、後継者もいない。設備投資もできない。若者はこの業界を選ばない。
かつて世界一だった日本の金型技術は、もはや風前の灯です。
母を渡して、子供だけ欲しいなんて、無理な話だった
大手メーカーは「製品(子供)」だけを手に入れようとしました。
でも「金型(母)」を海外に渡してしまえば、やがて子供も向こうで生まれるようになります。
そして実際、そうなりました。
中国メーカーは金型を作れるようになり、製品も作れるようになり、やがて自分たちのブランドで世界市場に打って出るようになりました。
日本の家電メーカーは、自ら競合を育ててしまったのです。
これ、誰が止めるべきだったんでしょう?
経営者でしょうか? 購買担当者でしょうか? 政府でしょうか? それとも、私たち金型屋自身でしょうか?
正直、私にもわかりません。
ただ一つ言えるのは、「目先のコスト」だけを見て、「技術の価値」を見なかった。その判断が、日本の製造業を今の状況に追い込んだということです。
金型屋として、この30年を振り返ると、悔しさでいっぱいになります。
でも、まだ終わったわけではありません。
残された技術を、次の世代にどうつないでいくか。それが、今の私たちに課された使命だと思っています。


