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型屋が消えていく

「金型の修理をお願いしたいんです。どこにも断られて……」
最近、この問い合わせが全国からやたらと多い。
なぜ断られるのか。理由は明快だ。他社が作った金型は、触りたくないからだ。
図面がなければ設計思想がわからない。下手に触って壊したら責任問題になる。リスクばかり高くて、割に合わない。だから断る。普通はそうだ。

そもそも、なぜこうなったのか
型屋を「安く使い倒す」構造が、何十年も続いたからだ。
適正価格を払わず、納期だけ縮めて、利益を削り続けた。その結果、型屋は後継者も育てられず、次々と廃業した。
廃業した型屋の金型は、図面も設計思想も一緒に消える。残った型屋が「触りたくない」と言うのは、怠慢でも根性論でもない。合理的な判断だ。
今になって「修理してくれる型屋がいない」と慌てている。当たり前だ。種を蒔かなかった畑から、実は採れない。

修理を断られる、本当の理由
金型には製作者の設計思想が込められている。鋼材の選定、パーティングラインの取り方、冷却水路の配置、ゲート位置——これらすべてが、設計者の経験と意図の結晶だ。
図面のない金型を修理することは、設計図のない建物の壁をぶち抜くようなものだ。それが梁かもしれない。壊れても責任は取れない。
本来、金型は「作った会社が一生面倒を見る」前提で設計されていた。しかし廃業してしまえば、その知識は永遠に失われる。

型屋を「コスト」としか見なかった結果が、今のこの状況だ
私は金型業界を30年見てきた。大手企業が協力会社の育成を本気でやっているのを見た記憶が、ほとんどない。あるのは「コストダウン要請」「納期短縮」「品質向上」の三拍子だけだ。
修理できる型屋がいなければ、量産ラインは止まる。1日ラインが止まれば、損失は金型製作費の何倍にもなる。「型屋コスト削減」で積み上げた利益が、ラインストップ一回で消えていく。
まだ間に合うと信じている。ただし、変えなければならない。今すぐに。

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